pearl/coral/shell

生物が作る宝石グループでまとめてみました。

 パール(真珠)は宝石的説明だと「軟体動物によって作られた結石」。古くは西暦紀元105年、古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』には、「世界のあらゆる貴重なものの中で最も高価なもの、それはパールである」と記されていることからも、天然パールの希少さがうかがえます。ルネッサンス期には、ヨーロッパの貴族がこぞって狂奔したため、歴史家はこの時代をパール時代とも呼んでいます。
 パールの養殖技術が開発されるまでの何千年もの間、パール産業はパールそのものを養殖することではなく、美しい虹色に輝き耐久力をもつ物質としての真珠の母貝を取り出すことが目的でした。パールの養殖技術が開発されるまでの何千年もの間、象眼細工やボタンなどの装飾のために使われた流通量を考えると、牡蠣1万個に1つしか見つからない自然状態のパールの希少性的価値と比較しても、より大きな産業規模的価値が真珠の母貝のほうにあったことはいうまでもありません。
 パールの色は貝の種類とその育成環境によって異なり、黒から白、クリーム、灰色、青、黄、緑、薄紫、藤色など様々な色合いがありパール特有の光沢がそうした色を上品に発色させています。

 コーラル(珊瑚)は海に生息するサンゴ虫によって形成された骨格です。ギリシャの伝説では、ペルセウスがメデューサの首を刎ねた時に流れ落ちた血から出来たのが珊瑚だとされています。太古の昔には、悪意から身を守ってくれるものと信じられ魔除けとして身につけられました。
 日本周辺で採取できる珊瑚は赤色とピンクで、根付けの象眼細工として広く用いられてきました。化石化した珊瑚は「フォシルコーラル」と呼ばれカボッションなどに磨かれて優し色合いと個性的な景色を楽しむことができます。

 シェル(貝殻)は珊瑚と同様に生物学的なプロセスによってできた鉱物性の物質です。貝殻の構成鉱物はカルサイト(方解石)もしくはアラゴナイト(霰石)でいずれも炭酸カルシウムです。貝殻は軟体動物の細胞から分泌される炭酸カルシウムが層状になったもので、炭酸カルシウムの層の数、層を構成する物質(アラゴナイトだけか、それともカルサイトも伴うかなど)、層の構造、軟体動物の種類によって異なるため、生物種ごとに固有の構造が形成され様々な貝殻が生み出されます。
 海棲・淡水棲どちらの貝殻も彫刻や象嵌など装飾用の素材として使われています。上記パールの項目の通り、18世紀後半から19世紀を通してパールの貝殻を使ったボタンの生産量は製造工程の機械化によって飛躍的に増加し、それに伴って真珠そのものよりも真珠の母貝に注目が集まり、現在でもカメオに彫刻されたり装飾工芸の素材として使用されています。
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